欲求不満のアナタへ
何が食べたいって?
アタシ?
なーんて言っても
通じない
アナタはいつも
ないものねだり
お預け食わされた
顔してばかり
ある物は
全部あげる
できる事は
なんでもしてあげる
それでも
アナタは不満顔
アタシを全部
手に入れようったって
無理な事
早く気付いてよね
逆襲 1
「おい。待てよ。」
「おいっ。おいってば、」
いきなり私の肩を、
男の手が摑んだ。
「きゃっ」
「俺だよ。俺。」
え? ああ・・・
「覚えてるだろ?」
「ええ。」
「ああ、よかった。
こんな街中で、
どなたでしたっけ、
なんて言われたひにゃあ、
カッコ悪いってもんじゃないよ。」
覚えてるわよ。
忘れたりしないわよ。
「今、暇してる?
ちょっと、そこら辺の店で、
お茶でもしない?」
暇?・・・そうね。
私たちは、
そこら辺の店に入っていった。
「なに、今、どうしてるの?」
「え、あの、前のままよ。」
「ふーん。
俺、転職したんだ。
営業してる。」
前も、営業だったじゃない。
「なんの?」
「あれだよ。
介護用品とか・・・」
へえー、似合わない。
「君って、とっくに、
結婚しちゃってると思ってたよ。
見合いとかでさ。」
なによ、それ、どういう意味?
「で、カレシとかいないの?」
「ええ、いないわ。」
いないわよ、できやしないわよ。
「君と・・・
あんな別れ方したから、
ずっと、気になってたんだ。」
別れ方?
捨て方の間違いじゃないの?
「いや、ほんとに、
あの時は、俺もどうかしてたんだ。」
へえ~、今はまともだって言うの?
「ずっと、気になっててさ。」
さっき、聞いたわよ。
「君に謝りたいって、思ってたんだ。
何度も、電話しようとしたんだけど、
なんか、しずらくて・・・」
そりゃあ、そうでしょうよ。
「ここで会えてよかったよ。
ほんとに、あの時は、わるかった。
謝るよ。」
謝ってすむことかしら?
「俺も、あれから、
いろいろあってね。」
そう、いつだって、
いろいろあるのよね。
「いやあ、もう、
今時の女ってヤツは、
まったく、どうしようもないよ。」
・・・・・
「それに比べりゃ、君はいいよ。」
・・・・・
「いい女だよ。」
・・・・・
「今になってみて、
別れなきゃよかったって、
思ってるんだ。」
・・・・・
「どう?
もう一度、俺と、
つきあってみてくれないか?」
・・・・・
「今度こそ、大切にするよ。
泣かせるようなことはしない。
ね、どう?」
・・・・・
店を出ると、
もう、日が暮れていた。
街の灯りが、いつになく、美しい。
私たちは、ワインを飲みながら、
食事をした。
こんなことなら、
もっと、いい服着て来るんだったわ。
「君って、少しも変わってないね。
なんだか、癒されちゃうなあ。」
あら、そうなの?
「君みたいな優しい子、
あんまりいないんだよ。」
ふうん、我儘な子が多いのね。
<つづく>
逆襲 2
「少し、歩こうか。」
でも、私、ちょっと、
酔っちゃったみたい。
まっすぐ歩けないわ。
「大丈夫?
どこかで、休んでいくかい?」
ん~、そうねえ。
「横になってろよ。
風呂入れてくるから。」
あ~、このベッド、気持ちいい~。
すごく、眠い。
♪~♪、♪~♪
あ~、な~に?
私の耳元で、
着信音が鳴ってるう。
はあい、出ますよ。
「もしもし~」
「ちょっと!
何してんのよ!
迎えに来てって、
言っといたでしょ!
すぐ来てよ、すぐ!」
けたたましい女の声が、
一方的に怒鳴って、切れた。
「風呂、入ろうか?」
風呂ですって?
風呂?
いやよ!
「私、帰る!」
「ええっ!
おい、何言ってんだい。」
「帰るったら、帰るの!」
「ちょっと、待てよ。
ここまで来て、それはないだろ。
な、君だって、
その気になってたんだし・・・」
「気が変わったの。」
「おい」
いきなり、男の腕が、
私を抱きすくめた。
「いやっ。放して!」
「おとなしくしてろよ。
ほら、じっとして!」
「いやったら、いやなの!」
「なんだよ。
不自由してんだろ?
慰めてあげるからさ。」
なによ、なによ。
なんなのよ!
余計なお世話だわ。
「さあ、もう、観念しろよ。」
無我夢中で、もがいていたら、
何かが、手に触れた。
急いで、それを摑んで、
めちゃくちゃ振り回した。
「う・・・」
男は、ベッドの下で蹲ってる。
「このやろう・・・」
ガラスの灰皿だった。
♪~♪、♪~♪、♪~♪
男は、携帯を取ろうとして、
蠢いたが、
手は、空中を彷徨うばかりだ。
「代わりに、出てあげるわ。」
「あっ、よせ、やめ・・・」
「あんた、何様だと思ってんのよ!」
さっきの女の声が、
一オクターブ高くなっている。
「つきあってくれって言うから、
つきあってやってるんじゃない。
こんなに待たせるなんて、
大したもんね。
もう、あんたには、頼まないわ。」
「あら、そうなんですか。」
「あ、おい、よせ。」
男は焦って、もがいているが、動けない。
「何よ、あんた、誰?」
「いっしょに、ホテルに来てる女です。」
「やめろよ。イテテ・・・
電話、よこせよ。」
男は、打ち所が悪かったのか、
すぐには、起き上がれないらしい。
「あ、そう、わかったわ。
じゃ、アイツに言っといて。
二度と、掛けてこないでってね。」
「はい、お伝え致します。
二度と、掛けてこないで・・・ですね。
間違いなく、お伝えします。」
「ぁ~・・・」
男は、もう、
起き上がる気力すら、
失ってしまったらしい。
<つづく>
逆襲 3
「大丈夫かしら?」
ん?・・・誰だ?
この子、誰だっけな。
うっ・・・痛!
頭、痛いな。
「ねえ、大丈夫?
何か、答えて・・・」
「あ・・・ああ。
君か、大丈夫、起きるよ。」
「ああ、よかった。
ごめんなさい。」
何で謝ってるんだろ。
「怪我しちゃったかしら?
どこが、痛いの?
ちょっと、見せて。」
怪我、してんのか、俺?
女は、ベッドに座った俺の体を調べ始めた。
「どこも、出血はなさそうね。」
「あっ! 痛っ!」
いきなり、頭を撫でやがった。
「ご、ごめんなさい。
ここ打ったのね。
瘤ができてる。
冷やしたほうがいいかしら。」
女は、ホテルのタオルを持って、
洗面所に入った。
ああ、そうか。
あいつに殴られたのか。
は、カタ無いや。
「ほんとに、ごめんなさい。
私、夢中で、何が、なんだか・・・」
あ~、気持ちいいなあ。
ひんやりして・・・
「このまま、ちょっと、横になってて。」
ああ、そうだな。
そうしよう。
女は、俺の側に座っている。
しばらくすると、
別のタオルを濡らして来た。
「タオル、替えるわね。」
「ああ、ありがとう。
もういいよ、もう帰れよ。」
「でも・・・」
「いいんだ。
悪いのは、俺のほうだからな。
君なら、
ついてくるんじゃないかって、
声、掛けてみた、
いい加減なヤツだよ、俺は。」
「わかってるわ。」
え?
「あなたが、私のこと、
好きになったりしないって、
わかってたのよ。
でも、誘ってくれた時、
うれしかったの。
こんな私でも、
誘ってくれる人がいるって・・・」
・・・・・
「それに、私・・・
馬鹿みたい・・・ね。
あなたのこと、
きらいになれない・・・
こんなことになっても、
きらいになんて、なれないのよ。」
・・・・・
「でも、そうね・・・もう、帰るわ。
念のため、病院に行ってよね。
外傷がなくても、頭だし、
レントゲンだけでも、
撮ってもらっといた方がいいわ。」
「あ、ああ、そうだな。」
「じゃあ・・・お大事に・・・」
「あ、おい、ちょっと、待って・・・」
「え?」
「君の携帯、教えてくれない?」
・・・・・
「今日の埋め合わせ、させてくれないか。」
・・・・・
「いや、させてくれ。」
・・・・・
「俺にしちゃ、珍しく、
真面目に言ってんだぜ。」
・・・・・
「そう、じゃあ、これ。」
女は、手帳を一枚破って、
数字を書いて渡した。
「じゃあ・・・
期待しないで、待ってるわ。」
そういい残して、帰って行った。
俺は、今もらったメモを眺めていた。
ん?・・・なんか、落ちてる。
床に一枚の写真が落ちていた。
それは、昔、俺たちが、
付き合ってた頃の写真だった。
・・・・・
俺は、
反射的に、携帯を手に取ると、
メモの数字を押していた。
<END>
私
今の私を見たら
あなたはどう思うだろう
私のすべてを見たら
あなたは驚くだろうか
私の裏側が見えたら
あなたは嫌になるかもしれない
白も黒も灰色も
全部、私
固体も液体も気体も
全部、私
声も言葉も涙も
全部、私
丸ごと全部
私なんだもの