夢の欠片 -パニック障害な私ー -310ページ目

欲求不満のアナタへ




何が食べたいって?


アタシ?

 

なーんて言っても


通じない


アナタはいつも


ないものねだり


お預け食わされた


顔してばかり


ある物は


全部あげる


できる事は


なんでもしてあげる


それでも


アナタは不満顔


アタシを全部


手に入れようったって


無理な事


早く気付いてよね




逆襲 1




「おい。待てよ。」

「おいっ。おいってば、」

いきなり私の肩を、

男の手が摑んだ。

「きゃっ」

「俺だよ。俺。」

え? ああ・・・

「覚えてるだろ?」

「ええ。」

「ああ、よかった。

 こんな街中で、

 どなたでしたっけ、

 なんて言われたひにゃあ、

 カッコ悪いってもんじゃないよ。」

覚えてるわよ。

忘れたりしないわよ。

「今、暇してる?

 ちょっと、そこら辺の店で、

 お茶でもしない?」

暇?・・・そうね。




私たちは、

そこら辺の店に入っていった。

「なに、今、どうしてるの?」

「え、あの、前のままよ。」

「ふーん。

 俺、転職したんだ。

 営業してる。」

前も、営業だったじゃない。

「なんの?」

「あれだよ。

 介護用品とか・・・」

へえー、似合わない。

「君って、とっくに、

 結婚しちゃってると思ってたよ。

 見合いとかでさ。」

なによ、それ、どういう意味?

「で、カレシとかいないの?」

「ええ、いないわ。」

いないわよ、できやしないわよ。

「君と・・・

 あんな別れ方したから、

 ずっと、気になってたんだ。」

別れ方?

捨て方の間違いじゃないの?

「いや、ほんとに、

 あの時は、俺もどうかしてたんだ。」

へえ~、今はまともだって言うの?

「ずっと、気になっててさ。」

さっき、聞いたわよ。

「君に謝りたいって、思ってたんだ。

 何度も、電話しようとしたんだけど、

 なんか、しずらくて・・・」

そりゃあ、そうでしょうよ。

「ここで会えてよかったよ。

 ほんとに、あの時は、わるかった。

 謝るよ。」

謝ってすむことかしら?

「俺も、あれから、

 いろいろあってね。」

そう、いつだって、

いろいろあるのよね。

「いやあ、もう、

 今時の女ってヤツは、

 まったく、どうしようもないよ。」

・・・・・

「それに比べりゃ、君はいいよ。」

・・・・・

「いい女だよ。」

・・・・・

「今になってみて、

 別れなきゃよかったって、

 思ってるんだ。」

・・・・・

「どう?

 もう一度、俺と、

 つきあってみてくれないか?」

・・・・・

「今度こそ、大切にするよ。

 泣かせるようなことはしない。

 ね、どう?」

・・・・・




店を出ると、

もう、日が暮れていた。

街の灯りが、いつになく、美しい。

私たちは、ワインを飲みながら、

食事をした。

こんなことなら、

もっと、いい服着て来るんだったわ。

「君って、少しも変わってないね。

 なんだか、癒されちゃうなあ。」

あら、そうなの?

「君みたいな優しい子、

 あんまりいないんだよ。」

ふうん、我儘な子が多いのね。



  <つづく>



逆襲 2




「少し、歩こうか。」

でも、私、ちょっと、

酔っちゃったみたい。

まっすぐ歩けないわ。

「大丈夫?

 どこかで、休んでいくかい?」

ん~、そうねえ。




「横になってろよ。

 風呂入れてくるから。」

あ~、このベッド、気持ちいい~。

すごく、眠い。

♪~♪、♪~♪

あ~、な~に?

私の耳元で、

着信音が鳴ってるう。

はあい、出ますよ。

「もしもし~」

「ちょっと!

 何してんのよ!

 迎えに来てって、

 言っといたでしょ!

 すぐ来てよ、すぐ!」

けたたましい女の声が、

一方的に怒鳴って、切れた。




「風呂、入ろうか?」

風呂ですって?

風呂?

いやよ!

「私、帰る!」

「ええっ!

 おい、何言ってんだい。」

「帰るったら、帰るの!」

「ちょっと、待てよ。

 ここまで来て、それはないだろ。

 な、君だって、

 その気になってたんだし・・・」

「気が変わったの。」

「おい」

いきなり、男の腕が、

私を抱きすくめた。

「いやっ。放して!」

「おとなしくしてろよ。

 ほら、じっとして!」

「いやったら、いやなの!」

「なんだよ。

 不自由してんだろ?

 慰めてあげるからさ。」

なによ、なによ。

なんなのよ!

余計なお世話だわ。

「さあ、もう、観念しろよ。」

無我夢中で、もがいていたら、

何かが、手に触れた。

急いで、それを摑んで、

めちゃくちゃ振り回した。

「う・・・」

男は、ベッドの下で蹲ってる。

「このやろう・・・」

ガラスの灰皿だった。

♪~♪、♪~♪、♪~♪

男は、携帯を取ろうとして、

蠢いたが、

手は、空中を彷徨うばかりだ。

「代わりに、出てあげるわ。」

「あっ、よせ、やめ・・・」

「あんた、何様だと思ってんのよ!」

さっきの女の声が、

一オクターブ高くなっている。

「つきあってくれって言うから、

 つきあってやってるんじゃない。

 こんなに待たせるなんて、

 大したもんね。

 もう、あんたには、頼まないわ。」

「あら、そうなんですか。」

「あ、おい、よせ。」

男は焦って、もがいているが、動けない。

「何よ、あんた、誰?」

「いっしょに、ホテルに来てる女です。」

「やめろよ。イテテ・・・

 電話、よこせよ。」

男は、打ち所が悪かったのか、

すぐには、起き上がれないらしい。

「あ、そう、わかったわ。

 じゃ、アイツに言っといて。

 二度と、掛けてこないでってね。」

「はい、お伝え致します。

 二度と、掛けてこないで・・・ですね。

 間違いなく、お伝えします。」

「ぁ~・・・」

男は、もう、

起き上がる気力すら、

失ってしまったらしい。



  <つづく>


逆襲 3

「大丈夫かしら?」

ん?・・・誰だ?

この子、誰だっけな。

うっ・・・痛!

頭、痛いな。

「ねえ、大丈夫?

 何か、答えて・・・」

「あ・・・ああ。

 君か、大丈夫、起きるよ。」

「ああ、よかった。

 ごめんなさい。」

何で謝ってるんだろ。

「怪我しちゃったかしら?

 どこが、痛いの?

 ちょっと、見せて。」

怪我、してんのか、俺?

女は、ベッドに座った俺の体を調べ始めた。

「どこも、出血はなさそうね。」

「あっ!  痛っ!」

いきなり、頭を撫でやがった。

「ご、ごめんなさい。

 ここ打ったのね。

 瘤ができてる。

 冷やしたほうがいいかしら。」

女は、ホテルのタオルを持って、

洗面所に入った。

ああ、そうか。

あいつに殴られたのか。

は、カタ無いや。

「ほんとに、ごめんなさい。

 私、夢中で、何が、なんだか・・・」

あ~、気持ちいいなあ。

ひんやりして・・・

「このまま、ちょっと、横になってて。」

ああ、そうだな。

そうしよう。

女は、俺の側に座っている。

しばらくすると、

別のタオルを濡らして来た。

「タオル、替えるわね。」

「ああ、ありがとう。

 もういいよ、もう帰れよ。」

「でも・・・」

「いいんだ。

 悪いのは、俺のほうだからな。

 君なら、

 ついてくるんじゃないかって、

 声、掛けてみた、

 いい加減なヤツだよ、俺は。」

「わかってるわ。」

え?

「あなたが、私のこと、

 好きになったりしないって、

 わかってたのよ。

 でも、誘ってくれた時、

 うれしかったの。

 こんな私でも、

 誘ってくれる人がいるって・・・」

・・・・・

「それに、私・・・

 馬鹿みたい・・・ね。

 あなたのこと、

 きらいになれない・・・

 こんなことになっても、

 きらいになんて、なれないのよ。」

・・・・・

「でも、そうね・・・もう、帰るわ。

 念のため、病院に行ってよね。

 外傷がなくても、頭だし、

 レントゲンだけでも、

 撮ってもらっといた方がいいわ。」

「あ、ああ、そうだな。」

「じゃあ・・・お大事に・・・」

「あ、おい、ちょっと、待って・・・」

「え?」

「君の携帯、教えてくれない?」

・・・・・

「今日の埋め合わせ、させてくれないか。」

・・・・・

「いや、させてくれ。」

・・・・・

「俺にしちゃ、珍しく、

 真面目に言ってんだぜ。」

・・・・・

「そう、じゃあ、これ。」

女は、手帳を一枚破って、

数字を書いて渡した。

「じゃあ・・・

 期待しないで、待ってるわ。」

そういい残して、帰って行った。

俺は、今もらったメモを眺めていた。

ん?・・・なんか、落ちてる。

床に一枚の写真が落ちていた。

それは、昔、俺たちが、

付き合ってた頃の写真だった。

・・・・・

俺は、

反射的に、携帯を手に取ると、

メモの数字を押していた。

 

   <END> 


 



 

 

 

今の私を見たら

 

あなたはどう思うだろう

 

私のすべてを見たら

 

あなたは驚くだろうか

 

私の裏側が見えたら

 

あなたは嫌になるかもしれない

 

 

 

白も黒も灰色も

 

全部、私

 

固体も液体も気体も

 

全部、私

 

声も言葉も涙も

 

全部、私

 

 

 

丸ごと全部

 

私なんだもの